ゲーム事業ではROASは不要!?ゲームビジネス衰退させるROAS思考に要注意
最近、とあるゲーム会社の人から
ROASとROIって何が違うのですか?
という質問を受けました。
いまの会社ではROIは重視していなくて
ROASだけで事業成果を判断していたもので・・・
という話を聞いて、少しびっくりしたものです。
というわけで今回は、ゲームマーケティングにおけるROASとROIについて
ちょっとばかり踏み込みながら解説してみたいと思います。
ゲームアプリビジネスにおけるROAS、ROI、読み方、違い比較
ROASは「ロアス」と読みます
ROIはそのまま「アール・オー・アイ」と読みます。
初めて聞いた人にとっては呪文みたいな言葉なのですが、ゲームビジネスをする上で、避けては通れない重要キーワードでもあります。
そこで、
これだけ押さえておけば間違いなし!
両者の違いを簡単にまとめておきましょう
ROAS(Return On Advertising Spend)※読み方はロアス
ROASとは、使った広告費に対して得られた広告経由での「売上」を指す指標です。
例えば100万円の広告費を投下して
200万円の売上をあげたら
200万円(売上)÷100万円(広告費)×100%=200%(ROAS)
となります。
広告費の投下金額に対して2倍のリターンが「売上」として見込めるというわけです。
ROI(Return On Investment)※読み方はアール・オー・アイ
ROIとは、使った広告費に対して得られた広告経由での「利益」を指す指標です。
例えば100万円の広告費を投下して
200万円の利益をあげたら
200万円(利益)÷100万円(広告費)×100%=200%(ROI)
となります。
広告費の投下金額に対して2倍のリターンが「利益」として見込めるというわけです。
つまり、まとめると
ROASは売上視点
ROIは利益視点というわけです。
ただし、
売上≠利益ではありませんので
仮にROASが200%であっても
必ずしも事業として儲かっているかは不明です。売上は2倍でもその中身は赤字で儲かっていないというケースもあるのです。
ゲームマーケティングではROI、ROASのどっちが重要なの!?
先に結論からお伝えすると
ゲームマーケティングにおいてはROIが重要な指標であり、むしろROASは使わない(使用に適さない)のではないかと思います。
しかしながら、ROAS的な発想は、長年、ゲーム事業に染み付いてきた印象があります。
実際にROASという具体的な言葉を使わないとしても、それに準じた意識感覚でゲーム事業が行われてきた印象があり、長年、ゲーム事業に関わってきた中で違和感を感じていました。
例えばこんなケースです。
ゲームソフト、ゲームアプリのセールス目標は
・販売本数10万本
・売上10億円
・事前登録10万
・ダウンロード100万
みたいな数字ありきで語られるケースによく遭遇することがあります。
とはいえ、私の周辺では最近、ほとんど聞かなくなりましたが
それでも、今回、とあるゲーム会社の人からの話を聞いて、依然として多くのゲーム会社では、経営層、マネジメント層など、トップダウンによる数字の落とし方は存在していると感じました。
このように数字ありきの発想になってしまうと
どうしても、ROASだけに意識が集中してしまう可能性があります。
でも、これって本質的ではありません。
・販売本数10万本って利益出てるの?
・売上10億円って利益でてるの?
・事前登録10万って内訳はどうなの?(実際何人インストールしてくれるの?)
・ダウンロード100万って、1週間で何人残っているの?
見た目の数よりも、
その中身が重要なのですが
ROAS思考に縛られてしまうと
見た目の数字をつくる事だけに
意識が向いてしまう恐れがあります。
そこで本質を見抜くために使える指標としてROIさんの登場というわけです。
ROIは利益視点で投資効果を判断してくれます。
※個人的にはROASって本当に必要なのか?
ROIだけで十分じゃないのか?とは思うのです。
ROAS思考がスマホゲームの事前登録100万という謎の数字をつくりだす原因!?
「スマホゲームの事前登録で100万突破!」
なんていう数字がニュースで踊るのをみますが
実際のところ、事前登録として100万件の価値を持っているケースは存在しないと断言できます。
事実、100万件を獲得しながら、1年もたたずサービス終了に至った
ゲームアプリも多数存在します。
本当に事前登録100万人の価値がそこに存在するならば、1年もサービスが持たないなんて到底説明できない話です。
昨今の事前登録100万人の内訳のほとんどは
LINE、Twitterから構成されますが、事前登録100万人のケースにおいては、そのほとんど100%のケースにおいて
通称LINEブーストと呼ばれる(私がそう呼んでいるだけかも)
LINEコインをインセンティブにした友だち登録広告や
Twitterブーストと呼ばれる(私がそう呼んでいるだけかも)
Twitterにおける何かしらモノをインセンティブにした
フォロワー獲得施策などによって
事前登録100万人がつくられています。
通称LINEブーストで獲得したLINE友達は、LINEアカウントの友達になる事によって、LINEコインがもらえます。
よって彼らは事前登録を意識しているかも不明で、企業アカウントの友達になることでLINEコインがもらえることを目的としています。
本当の意味でのLINE友だちになる意識はないので、コインを入手した瞬間にLINEアカウントをブロックしてきます。
よって通称LINEブーストで獲得した事前登録とおもわしき友達は
見た目のLINE友だちの数字に対して、実際の有効LINE友だちは恐ろしく少なくなります。
一方で、通称Twitterブーストで獲得したフォロワーは
LINEに比べるとブロック(=Twitterの場合はアンフォロー)する人は少なく、なんとなくフォロワーがたくさん集まったような錯覚を覚えるかもしれません。
しかし、そもそも、そのゲームの公式Twitterアカウントを純粋な気持ちでフォローする意志は存在しなかったわけですから、そのゲーム公式Twitterで今後、情報を発信しても、
フォロワーの目には留まりません。
フォローはし続けているけど、実態はブロックしているのと同じ状態が作られます。
このように、見た目のLINE友だちや、Twitterフォロワー数は100万獲得しているわけですから、ゲーム会社の社内やゲームメディアに対しては、見た目が良い数字が作られ、実際に見た目上のROASは良い数字になります。
しかし、このように集められた事前登録100万人には、その本質としての実態が伴わないので、ゲーム配信後の実際のゲームインストールは限りなく低くなります。
結果、ROI視点ではまったく割りに合わない100万人となるわけです。
※通称Twitterブーストによるフォロワー稼ぎに相当するのは
RT(リツイート)すると何かしら当たる
フォローすると何かしら当たる
といったゲームの本質とは異なる別のメリットでフォロワーを獲得する施策全般を指します。
このようなブーストを使った事前登録は、明白な事実として価値がなく、ゲームインストールを底上げする効果は期待できないのですが、いまだに、多くのゲーム会社がやっていまs。
これこそROI思考ではなく、ROAS思考に偏っている証拠なのです。
ROI思考になれば数が本質ではないということがわかる
そこで話をROI視点に戻してみましょう。
改めて説明する必要はないと思いますが、ここまでの話を聞いていただいた多くの方は、、ブーストで集められた100万人の事前登録が価値がない事にすぐ気づきます。
それよりも、ゲームアプリの配信直後に
・状態の良いユーザーを
・必要十分な数だけ
・配信直後にインストールさせられるか
という事が重要であるとわかります。
なので極端な例を出すと
5万人しか事前登録が集まらなくても
そこから50%に相当する2.5万人の人がゲームをインストールし
かつ、それらユーザーがゲームを熱心に長く遊んでくれる状態にあるならば
100万人の事前登録にも匹敵するケースもありえるのです。
一見、5万人という数字は少なく、不安に感じてしまうかもしれませんが
ここで申し上げたいのは、数ではなく、中身、状態が重要なのです。
という話をすると
「いや、それは違う」
「たくさんの人に知ってもらい遊んでもらうために事前登録やダウンロード数は重要」
「事前登録100万突破!となればニュースになるからおれも登録してみようかな、とクチコミも期待できる」
とおっしゃる方がいるかもしれません。
でも本当にそうでしょうか?
または
「事前登録の結果、配信1週間で100万ダウンロード突破!」
「順調なスタートダッシュが作れました」
なんておっしゃる方もいます。
でも本当にそうでしょうか?
ならばお伺いしたいのです。
100万人ダウンロードで
実際に1週間後に、毎日何人ゲームをプレイしていますか?
MAU(Monthly Active Users)ではありません。
DAU(Daily Active Users)をお聞かせ頂きたいのです。
配信初月のMAUなんて、見せかけの作り物なので本質じゃないですから。
※MAU:1か月のプレイユーザー
※DAU:1日のプレイユーザー
まとめ
事前登録に関しては
100万という数ではなく、その中身、質、状態が重要なので
事前登録の獲得の仕方が重要となります。
誰でもいいわけではなく、ただ数が欲しいわけでもありません。
どうやって、どこから、事前登録を獲得するかが重要というわけです。
すごく厳しい言い方をすると(すいません・・)
100万人の事前登録を集める事、つまり数字をつくることは
宣伝マーケティングではありません。
むしろ、中身や質、状態にこだわらず、ROIを悪化させ
お金にものをいわせて数だけで乗り切ろうとしている状態は
宣伝マーケティングにおいて、とても大切な「考え抜く努力」を放棄していると
私は思うのです。