こんにちは!
IT系マーケターの「はまねこ」です。
今回はこんな疑問に答えます
・マーケティングといえば何はリサーチでしょう
・ 市場調査とか、ユーザーインタビューとか
データを積み上げてターゲットユーザーとか
戦略を決めるものですよね?
一見、正しいように見えますが
これは正解でもあり、間違いでもあります。
むしろ、多くのケースでリサーチ結果に依存しすぎることで 本質が見えなくなり、失敗ケースが多いです。
そこで今回は
「マーケティング戦略でリサーチは重要です」
「でも過信しすぎると失敗します」
という話をしたいと思います。
優秀でマジメなマーケターほど、数字ばかり見てしまい成功確率があがらない、という話です。
目次はこちら
・市場調査、リサーチは万能ではない ・市場調査、リサーチは参考データとして使えても判断には使えない ・リサーチだけでマーケティング戦略をつくると高い確率で失敗します ・ゲームなど個人の嗜好に依存する商材は調査と相性が悪い |
市場調査、リサーチは万能ではない
一般的に市場調査やリサーチに対して高い信頼を寄せている人が多いかもしれません。
分かりやすい例をあげると
・内閣支持率
・視聴率
・人気タレントランキング など
何かしらの調査を元に算出された調査に対して、人々は興味を持ち その数字の変化に対して敏感です。
同様に 企業においても、事業の決裁権を持つ人はデータを気にする傾向はあります。
自らの肌感と嗅覚で成功してきた経営者を除いて、例えば商品の性質に差異がないような消費財メーカーなどは 市場調査から成功へのヒントを得ようと必死です。
また、ゲームやエンタメなど正解が存在しない業界において、調査は大きな判断基準として用いられる傾向があります。
なぜなら、ゲームやエンタメには明確な正解が存在しないからで、客観的なデータを証拠に事業判断せざるを得ないのです。
また多くのゲーム会社の決裁者が、売れるゲーム、売れないゲームを判断する能力が不足していることも市場調査に依存してしまう原因のひとつです。
ゲーム会社の決裁者がゲームクリエイターやマーケター出身ならまだしも、そうでないケースが多いから仕方ないことかもしれません。
そして、そもそもの話として
ゲームをはじめとしたエンタメは人間の感情に依存しており 人間の感情を読み解くこと自体が非常に難しいという点もあります。
もし、ヒット連発のゲーム会社が存在するなら(実際には存在せず、あの任天堂でさえ多くの失敗をしています) その会社は調査が優れているのではなく、
人間の感情を読み解き
時代の風を読むことを得意とした
凄い人物がその会社にはいるのだと推測できます。
前置きが長くなってしまいましたが調査とは
・調査設計(調査の作り方)
・調査対象(パネラーの集め方、内訳)
・調査結果の切り取り方(集計、分析方法)
によって結果が大きく変わってしまいます。
つまり調査する企業における調査設計担当の能力、裁量次第で 幾らでも都合のいい調査結果がつくれてしまうわけです。
まったく同じ調査でも、 実施する担当、企業によって結果は全然違ったものになってしまいます。
市場調査、リサーチは参考データとして使えても判断には使えない
わかりやすい例をあげましょう。
例えば、ラーメンの市場調査をするとしましょう。
ラーメンは地域で好みは分かれるかもしれませんが
「美味しい」「美味しくない」
と明確な結果が出せそうですね。
このような分かりやすい商材ならまだしもゲームのように
「面白い」「やや面白い」
というように、明確な結果が出しにくくエンタメ商材の場合は、
その結果を元にした判断次第で大きな間違いをしてしまうリスクがあります。
例えば調査の結果
被験者が「面白い」を選んだからといって、そのゲームを購入するか怪しいものです。
「やや面白い」を選んだ人は、実は面白いという感情は全くない状態かもしれません。
何を言いたいかというと
人によって「面白い」「やや面白い」の基準や定義は異なります。
ゲームやエンタメ系はラーメンの「美味しい」「美味しくない」 ほど、明確に調査で白黒を出すことが難しいのです。
このような曖昧な調査結果を元にマーケティング戦略を作成する場合、ゲームをはじめとしたエンタメ系商材の調査によって頻繁に起こりうる事例として
「面白い」と答えた人が100万人
「やや面白い」と答えた人が150万人
合計250万人が「面白い」というポジティブな選択をした
よって、このゲームは250万人に売れる余地がある
と判断をしてしまいがちです。
しかし、実際には50万人しか遊んでくれなかった・・・ という結果は多くのゲーム会社で発生しています。
つまり、50万人しか見込み客がいないゲームなのに、それに対する投資判断や、マーケティング戦略を見誤ってしまうわけです。
50万人という市場しか存在しないことが原因なのではありません。
もともと50万人しか遊んでくれない見込みなら、50万人の市場で利益を出すマーケティング戦略を取ることで、その限られた市場の中で成功を収めることもできたはずです。
250万人を狙うマーケティング戦略と
50万人を狙うマーケティング戦略は同じではありません。
なぜ、こんな乖離が起きるのか
それは調査というものに限界が存在するからです
・「面白い」「やや面白い」の基準や定義が個人に依存する
・1年前の調査は1年前のその瞬間を映したものであり、実際にそれが戦略に使われるタイミングと時差がある
・調査設計によって結果は幾らでもバイアスがかかる
・調査では競合や市場変化による影響まで見込めない
このような調査の限界は、調査を実施する側も十分理解していますから、これら不完全な部分をカバーするために
市場調査後に個別で対象者を呼んで個別インタビュー調査をやって、調査の限界をカバーしようとしますが、実際には完全にはカバーできません。
ちょっとばかりイメージしてみてください
追加で10人の個別インタビューを行っても、インタビューに呼んだ人が想定していたユーザー通りの人が来るとは限らないのです。
例えば
「Aというゲームをやっている」 という事で、インタビューに呼んだ
でも「Aというゲームはやっていない」 人が来た
ということはザラです。
そんなことあるの?と思うかもしれませんが
繰り返しますがそんなことはザラです。
なぜかというと、インタビューに呼ばれると謝礼が貰えるので、 謝礼目的として、インタビューに呼ばれやすい事前回答をする人もいますし
何よりも人間の記憶や回答は、結構いい加減なのものです。
よって10人呼んでも5〜7人は、想定していたユーザー属性からハズレた人が来てしまった
ということも普通にありえるのです。
ちょっと話がずれてしまいましたが
そう、考えていくと
・市場調査、リサーチは参考にはなるけど
・絶対的な過信はできない
という市場調査の限界が理解できると思います。
リサーチだけでマーケティング戦略をつくると高い確率で失敗します
もし、みなさんが作成しているマーケティング戦略が
市場調査の数字を大前提として作成しているものであるならば、間違いなく高確率でそのプロジェクトは失敗します(断言します)
キャラクター版権モノ、シリーズモノなど、市場調査以外に
それまでの「肌感」「経験」「その他独自のデータ」があるなら、そこまで深刻ではありませんが、
それが「完全新規で立ち上げるゲーム」ならば市場調査に依存することは非常にリスクが高いのです。
完全新規タイトルの場合、市場調査やインタビューに参加した参加者(パネラー)も完全新規タイトルですから初見となります。
初見のタイトルに対して、参加者がどこまで冷静に、かつ適切な回答を行い、その結果、正確な市場調査ができているか怪しいのです。
なぜ、怪しいのかその原因について、これからお話ししていきましょう。
ゲームなど個人の嗜好に依存する商材は調査と相性が悪い
ごく一般的な人間は過去の人生経験からしか答えを出せない生き物です。
まだ見ぬ未知なるものを想像して答えを出せるのは、クリエイターか、アーティストなど特殊な才能を持った一部の人に限られます。
市場調査とは、過去の経験値に基づき、情報を引き出す調査です。
よって、 キャラクター版権モノ、シリーズモノなど既に過去が存在して、誰もが想像できるモノなら、調査を行ってもある程度信頼ができる結果がえられる余地はあります。
しかし人間の過去の人生経験から導き出せない完全新規タイトルの場合、 どこまで信用できる市場調査が取れるかギモンです。
完全新規タイトルの内容にもよりますが、今までにない新規性の高いゲームだと調査の限界はあります。
ならばどうすればいいか?
というと、市場調査では無理であることをまず理解する必要があります。そして必要なことを明確に自覚する必要があります。
それは何かというと
「市場調査を超えた、作り手の意志を含んだ、これなら売れるはずという確信」が 完全新規タイトルには必要なのです。
これがないと完全新規タイトルはまず成功しません。(断言します!)
しかし、「これなら売れるという確信」は
作り手の嗅覚、経験値、クリエイティビティに強く依存します。
つまり特定の個人の能力に依存するため、会社組織における合議制では絶対に作り出せない世界とも言えます。
完全新規タイトルがなかなか成功しない原因は、ここのハードルが高く、個人の能力に依存しているという点にあるのです。
完全新規タイトルは合議制からは生まれない
世の中を驚かすような全く新しいゲーム(アソビ/エンタメ)が生まれる瞬間には共通点があります。
企業内でその企画提案すると、まず多くのケースで周囲から大反対されます。 大反対する側の論理としては
・そんな市場は存在しない
・市場調査で良い結果が出ていない
・いままでのゲームの歴史を振り返っても、売れる見込みはない
といったように過去から推測できる世界で結論を出そうとするからです。
しかし、不思議なことに、 こういう反対を押し切って、強い意志と確信をもって進めた完全新規タイトルが結果を出したりします。
一方で反対意見に押し負けて、忖度して、ゲームの方向性や内容を変更したタイトルでうまく行ったケースがありません。
この時点で「過去から推測できる売れそうなゲーム」に改変されてしまうからです。
ゲームをはじめとしたエンタメは 消費者の期待値を超えてこそ、初めて感動を与え、その結果、ヒットとなります。
期待値を超えるということは、過去の繰り返しではなく、いままでなかった、またはいままでよりレベルの高い領域に踏み込む必要があるのです。
しかし、市場調査やリサーチとは人間の過去体験を元にした世界での調査ですから、ここからは期待値を超える示唆は得られにくいということになります
私は周囲から大反対されるのはヒットの可能性があるサインだと私は思っています。もちろん失敗する可能性もゼロではありませんが、
もしそこに自分の中で強い意志と確信があるならば、ヒットする可能性はかなり高く、反対意見に押し負けて、忖度して、ゲームの方向性や内容を変更することにリスクがあると考えます。
なぜなら、多くのイノベイティブなヒットは、この反対意見を押し戻した先に存在した事例を知っているからです。
ここは一歩たりとも譲ってはいけないサインなのです。
まとめ
今回は「マーケティング戦略でリサーチは重要です。でも過信しすぎると失敗します」というテーマでお話をしました。
ということは「市場調査って不要ですか?」と質問を受けそうですが
結論として「市場調査は必要です」
ただし、市場調査だけを鵜呑みにするのではなく、 判断材料のひとつとして活用することで価値を出せますし、プロジェクトの成功確度をあげることができます。
そして最後に伝えたいことは
市場調査は仮説を検証するための手段です。
ですから、まず先にマーケティング戦略を作り、それを検証するための市場調査をする、この流れこそ、市場調査やリサーチの価値をさらにあげることができるのです。
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